強がりなセリフを呟いて、笑顔を作る。
素直になりたくて、でも素直になれなかった。
貴方に抱きしめて欲しいと心が叫び、不安だからと体が震える。
それでもただ笑顔を作り、一人耐えた日々。
恋しくて胸が苦しくて、戻れないあの日にただ想いを馳せていた。






















冷たすぎる雨が体を濡らし、体温を奪っていく。
ただ二人、笑い合っていたあの日々が幻のよう。
あなたは遠い人になってしまった。


「見て見て! アスラン独占インタビューだって」

「ほんとだ。あたしこの本買っちゃおうかな・・・・」


街中を歩けば必ず聞くこの言葉。
空を見上げれば高く連なるビルに設置された巨大モニター。
そこに映し出される映像は、やはり彼だった。
言葉で言い表すとすれば、まさに時の人というのだろう。
あんなに近かった存在が、今では雲の上の人になってしまった。


「え〜・・・・好きな人いるんだ・・・ショックー!」

「うそ!? ほんとだ・・・・・。でも私それでもアスランのこと好き」

「うん、うん。そうだよね! だって優しいしカッコイイもの!!」


知りたくないのに知ってしまう。
町中がまるでアスラン一色に染まってしまったようで、歩いているだけで嫌になる。
天気予報は晴れだといっていたのに突然雨が降るし、聞きたくもないアスランの話題が耳に入ってしまう。
最悪なことは重なるというけれど、これ以上どんなことがあるっていうのだろう。


「・・・・・最悪」


思わず呟いた言葉は自分に向けてのものだったのか、それとも今の現状になのか分からない。
それでもそう思ったのは事実で、これ以上何か起こってしまう前に早く家に帰ろうと足を早めた。














無事に何事もなく家に着いた。
やはり自分の考えすぎだったのだろうか。
とにかく何も起こらなかったのだからそれでいい。


「・・・・・・なにこれ?」


郵便受けを除くと、自分宛にライトグリーンの封筒が一通届いていた。
なんだろうかと考えながら、家の中へ入る。
宛名はご丁寧にもプリントアウトされたもので、また何処かのダイレクトメールかと思い裏返す。


「・・・・・・アスラン・・・・ファーストコンサート?」


ほらやっぱり・・・・・今日はついてない・・・・・・・・・・。
忘れたくても忘れられない。
忘れさせてくれない。
ねぇ・・・・・貴方はこれ以上私にどうしろっていうの?
考えないようにしようとすればするほど、彼のことが浮かんで離れない。
彼にとって、自分は妹のような存在でしかないというのに。
お願いだから、私を苦しめないで。
ぎゅっと目を閉じて、はその封筒をゴミ箱に落とした。


















「それじゃあ今でもその女性のことが忘れられないということですか?」

「えぇ、そうです。彼女だけが俺にとって全てです」

「そういってもらえるその方は幸せですね」

「そうだと・・・・・いいんですけど」


雑誌のインタビューを受ける彼――アスラン・ザラは今最も人気のあるミュージシャンだった。
自らが作詞作曲した曲を彼自身が歌うということで注目され、またその端正な容姿も相まって、さらに人気が高まっている。
しかしそれはつい最近のことで、それ以前は顔も名前も不明の天才ミュージシャンとしてアスランの存在は謎に包まれていた。
ところがデビュー3年目にして突然のカミングアウト。
もちろんマスコミはこのネタに食いついた。

『謎の天才ミュージシャンはハンサムボーイ!?』

そしてこの独占インタビュー。


「今回は色々なお話を聞かせていただきましたが、最後に一言お願いします」

「そうですね・・・・・やっぱりファンの皆さんがいてこその俺ですから、ファンの皆さんへ感謝の気持ちを・・・・・・・」

「ありがとうございます。これからの益々のご活躍を期待していますね!」

「ありがとうございます・・・・・・。次の仕事がありますのでこれで失礼します」


アスランは女性記者に微笑を向けると、席を立つ。
そしてその場のスタッフに挨拶をしながら、部屋を出て行った。






















続く




















またしても短編連載を始めてしまいました・・・・・・・。
その前に明日シリーズを完結させなければ!と思うのですが><
中々思うようにかけなくて。
このお話はアスランアイドル設定で、ヒロインとの関係はまだまだ謎な感じです^^
あと2〜3話くらいで完結予定。

06.03.13