不意に鳴った携帯の着信音。
いつも通り鞄から取り出して、開いたメールの差出人は・・・・・・・・。


数週間前、失恋した幼馴染からだった。


「なんで今更・・・・・・」


彼のことを吹っ切って、でもやっぱり忘れることなんてできないから距離を置いた。
いばらく忙しいから連絡しないで・・・・・。
そう送って、けれど返事は返ってこなかった。
それなのになんで・・・・・・?









明日、貴方と夢を見る・・・・・・













初めて出会った公園の噴水の前が、いつの間にか待ち合わせの場所になっていた。
アスラン・ザラというのが、彼の名前だ。
わかっているのはそれだけ。
歳も、住んでいる場所も何も知らない。
それでも会うたびに彼への気持ちが募っていって、やっと新しい恋を始められると思ってた。


「どうして今更・・・・こんなメール送ってくるのよぉ・・・・・」


どうすればいいのかわからない・・・・・否、答えはもうでている。
だけどそれを貫き通せるほど、失恋の傷は癒えてはいなかった。


「もしかして・・・・・・待った?」

「・・・・アスラン。ううん、私も今来たところだから」


走ってきたのか、息を荒くしたアスランがそこに立っていた。
は必死に笑顔を作ると、アスランに微笑んだ。
今は考えちゃだめ。
折角週に一度、アスランに会える日なのだから。
でも、この日のは焦っていた。
幼馴染の彼に傾いてしまいそうな自分を消し去るために、意地になりすぎていたのだ。
隣に腰掛けたアスランに、思わず隠していた本音をぶつけてしまうほどに・・・・・・・。


「ねぇ・・・・どうしてなにも教えてくれないの」

「・・・・・・?」

「私、アスランのこと何も知らない!!」


言ってしまったあとで、自分の過ちに気づく。
それは言ってはいけないことで、言うつもりのなかったものだったからだ。
唇を噛み締めて、アスランから視線を逸らす。
しばらく続いた沈黙に、が耐え切れなくなりそうになった時、アスランが口を開いた。


も聞かなかったし、なにも言わなかっただろう?」


自分のこと・・・・・。
そういった声が悲しそうな響きを含んでいて、は顔を上げる。
アスランは困ったように眉を寄せて、けれど優しい色を含ませた翡翠の瞳で、を見ていた。


「でも、俺も何も聞かなかったしお互い様だな」

「・・・・ごめんなさい」

「ほんとはそう言いたかったわけじゃないんだろ」


アスランの優しい声が、の耳に心地よく響く。
そしてはっきりと自覚した。

ああ、私はこんなにもアスランのことが大好きなんだ・・・・・。

自分の中で何かかが音を立てて崩れ落ちる。
過去はもう振り向かない。
前だけ見て歩いていこう。


「・・・・・ごめんなさい」

「いや、俺も悪かった」


素直に謝って、そして二人で微笑みあって、他愛もない話をしながら時間は過ぎていった。



















彼女とは別れた。
あのときの告白がまだ有効なら、付き合って欲しい。


たったそれだけで、彼は何を伝えたかったのだろう。
人を好きになって付き合って、それは簡単な気持ちでできることではない。
それなのに彼はこんなメール一通で、どうにかしようとしている。
彼の気持ちが伝わってこないのだ。
やはり所詮は都合のいい女でしかなかったのかもしれない。


いつまでもこんなこと考えてたらだめね。


明日はアスランとデートの日。
ベットの上にあるのは、先日買った白のワンピース。
今まで彼のために無理をしてあわせていた服装も、なにもかも全てやめた。
ピアスの穴はそのままで、髪だって切ってはいないけど・・・・・・。
無理をして背伸びをするのはやめたのだ。
アスランには、ありのままの自分を好きになって欲しいから。


さようなら


ただ一言、そう打ち込むと彼のデータを削除した。

























ということで、ヒロインの決別編でした。
しかし、まだアスランとはくっついておりません(汗)
次回はデート&告白編にしたいですv
そしてシリーズ化が決定しました!
その名も明日シリーズです^^

感想とかいただけると嬉しいです><

05.09.05