船を下りていくアスランの後姿を艦の出入り口から見つめながら、カガリを迎える紫色の髪の男性に視線を移した。


「カガリ!!」

「ユウナ!」


ユウナと呼ばれた彼はあからさまな態度でカガリと抱擁を交わす。
とはいえ、カガリは困っているようななんともいえない表情を浮かべていた。
アスランから聞いてはいたが、初めて見るカガリの婚約者にどうも嫌悪を覚えて仕方がない。
容姿や仕草、人柄以前になにか含むものがあるような気がしてならないのだ。


「暫くは・・・・無理かしら」


艦の修理などのこともあるが、暫くは外出許可は下りないだろうと予想する。
これ以上ここにいても意味はないので、名残惜しげにアスランを見た後、は自室へと向かう。










時の砂 〜運命の邂逅〜 8














「え? 外泊許可下りたの?」

「はい、メイリンは早速ヨウランたちと出かけていきましたよ」

「そう・・・あなたは行かないの?」

「まだ迷ってます。だから一緒に行きません?」


思っていたよりも早い外泊許可の知らせを聞いたのは、射撃訓練場でのことだった。
シンとレイに頼まれて指導をしていたのだ。
そこへルナマリアがやってきて今に至る。
外泊許可が下りたのはにとってありがたいことではあった。
偶然とはいえ、ここは自分にとって第二の故郷でもあるからだ。
ここには会いたい人たちが沢山いる。
しかし彼らに会うにはザフトであるルナマリを伴うことは出来ない。
悩んだ末に、は差し当たりのない程度に本音を告げた。


「ごめんなさい。実はもう、人と会う約束をしてしまって・・・・・」


そう告げると、ルナマリアは残念そうに眉を寄せる。
しかしすぐに笑顔を浮かべた。


「残念ですけど、仕方ないですよね。楽しんできてくださいね」

「ありがとう。レイ、シンも訓練はいいけど休める時に休んでおくのも軍人としての勤めよ」


相変わらず射撃の訓練を続ける彼らに一言声をかけると、もう一度ルナマリアに謝って着替えるために訓練場を後にした。














裾にレースが使われているシンプルな白地のワンピースに身を包み、かかとのあまり高くないサンダルを履いた。
ミネルバを降りてすぐ、偶然にもマリューと再会し、ラクスたちの所在地が知れた。
浜辺沿いの道を歩きながら、海を見る。
潮の香りが風に乗ってを吹き抜け、髪を揺らす。
それから暫く歩くと、崖の上に一軒の家を見つけラクスたちに会える喜びに顔をほころばせる。


「お腹すいちゃった〜・・・・」

「今日のご飯なにかな?」


小さな子供と思われる話声が聞こえ、それが海の方から聞こえたのでそちらへ視線を動かす。
そこには数人の子供たちが一人の少女の周りを囲むように、一緒に歩いている姿があった。
彼女ははピンクの髪をなびかせ、微笑ましく子供たちを見ている。
そしてそれは、もよく知る人物で・・・・・。


「ラクスさんっ!!」


の声に、ラクスが気づいたようでやんわりと綺麗に微笑んでいた。
砂に足を取られないように気をつけてラクスの傍まで近づく。


「あ〜、だ!!」

「今まで何してたんだよ〜」

「え? えぇっ? あの・・・・ちょっ」


ラクスの元へ行く一歩手前で子供たちが飛び出してきた。
驚きながらも、仕方がないのかなと思う。
なぜならが最後に彼らに会ったのは2年前、プラントへ行く前だったからだ。
2年も経てば様々なものが変わる。
自分もそうだけれど、何よりも子供の成長は早いのだ。


「あらあら・・・皆さんこれじゃあ先ほどと一緒ですわ」

「いいじゃんか〜」

「そうそう」

「確かに、久しぶりですものね。・・・おえりなさい」


ラクスが目を細めて微笑み、そっと手を差し出した。
自分にもまだ、おかえりと言ってくれる人がいる。
父は先の大戦の折、ザラ議長の側近であったために現在も身柄を拘束されているため、プラントに帰る場所はない。
ここオーブにだって自分の居場所はないのだと、そう思っていた。
だから余計に嬉しくて、思わず涙目になりながらラクスの手を握り返す。


「ただいま・・・・」





















時の砂 運命編第8話でした。
種編では周りの人たちよりもアスランとの絡みが
多かったのですが、運命編ではルナマリアやシン
といったアスラン以外の人との絡みが多いです。
だから逆ハー気味?(笑)
もちろんアスランとの絡みは後半になると多くなってきますが

次回は「女同士の本音」で行きたいと思います!
ちょっとキララク要素が入ってしまうかもなので苦手な方はご了承ください><
といってもラクスから見たキラ的なものだとは思います。

感想とかいただけると嬉しいですv

06.08.30