どうすればよかったのか、あの時のには考えつかなかった。
ただ黙って彼を抱きしめていることしか・・・・・・・。
それしか出来なかったのだ。


「もうすぐ明け方よ・・・部屋に戻った方が・・・・」

「・・・・わかってる。すまなかった」

「私はいいの・・・でも・・・・ううん、なんでもない」


言いかけた言葉を飲み込んで、はアスランを促した。
こんなところを誰かに見られては困る。
変にアスランとの関係を勘ぐられるわけにはいかなかったのだ。
幸い今は早朝、まだあまり出歩く者もいないだろう。


「・・・・・頑張りましょう、アスラン!」


そう呟いたあと、は掠めるようなキスをした。










時の砂 〜運命の邂逅〜 7











「ルナマリア、もう少し脇を締めてみなさい」

「は、はいっ!」


タリア艦長からルナマリアたちに射撃訓練をさせるよう頼まれた。
とはいえ、の呼びかけに答えてくれたのはルナマリアとシンだけで、信頼されていないわけではないのだろうけれど、やはりどこか不安に思う。


やっぱりレイにはあまり快く思われていないのかしら・・・・


そう思いながら、は海を眺めた。
今この艦はオーブに向かっている。
外に設置されたこの場所は、気晴らしにはもってこいの場所だろう。
微かに香る潮の匂いと、心地よい風。
隣にアスランがいれば、きっと彼にとって心休まる時間が持てただろう。
しかしそれは不可能というもので、は諦めに似た思いでルナマリアたちの訓練を見ていた。


「シン、貴方はもう少し集中しなさい」


ルナマリアよりは命中しているとはいえ、乱れの多い弾痕にシンの心情が見て取れた。
伊達に赤を着ているわけではないのだから、射撃の腕もそこそこあるだろう。


「そんなに言うならお手本を見せてくださいよ」

「え、私っ!? あ〜・・・・」


どうやら思っていたよりもシンのプライドを傷つけてしまったらしい。
小さな抵抗なのだろうが、シンの予想以上にに与えた衝撃は大きかった。
別に射撃が苦手というわけではないのだから、何も躊躇することはない。
しかしそうできなのは理由がある。


「あはは、笑わないでよ?」

「約束できません」

「・・・・・・だったら笑われないようにするわ」


おどけて言いながら、所定の位置につく。
始めてみるの実演に、シンやルナマリアは興味が押さえられない。
溜息を吐いた後、は銃を構えると真剣に画面を見据えた。


「・・・・わぁ・・・・・」


次々と現れては消えていく標的を、的確に射抜いていく。
何時になく真剣な瞳のに、二人は思わず見惚れてしまう。
完璧と言って良いほどの腕に、シンは己の敗北を自覚せずにはいられなかった。


「ふぅ・・・・・。残念、シンに笑われちゃうわね」

「え!? どうしてですか!」

「こんな完璧なの見せられたら笑うどこどじゃないと思うんですけど・・・・・」

「だって、3つも外しちゃったでしょう?」


素っ頓狂なことを言い始めるに、二人は驚きを隠せない。
あれのどこが完璧ではないというのだろう。
確かに二人の目には的を正確に射抜いていた用に見えた。
しかしは3発も外してしまったと言う。


「あの・・・・私には完璧に見えたんですけど・・・・」

「3ミリくらいズレちゃったの」


恐る恐る訊ねるルナマリアに、は至極当然とまでに答えを返す。
そんな些細な差など失敗のうちに入らないのではないかと思う。


「どうしてそう思うんですか?」


今まで付き合ってきた中で知っている彼女の性格ならば、あんな些細なことで細かく言う人ではない。
しかしどうしてそんなに細かく言うのだろうかと気になってしまった。
ルナマリアが聞くと、は苦笑交じりに答えてくれる。


「う〜ん・・・・昔ね、『どこが完璧だ、3ミリズレているだろう』って言う人がいてね」

「・・・・・・・・そんな人いるんですか?」

「あはは、うん。おまけに本人は寸分違わず命中させるから文句も言えないというか」


昔を思い出しているのだろう、苦虫を潰したような表情をするに乾いた笑いを浮かべるしかなかった。
そんな理由から僅かな違いが気になってしまうという。


「射撃の訓練か・・・・・」

「あら? 一緒にやります?」

「いや、俺は・・・・・」


突然上がった声に、ルナマリアが振り返る。
入り口に立っていたのはアスランだった。
誘うように声をかけたルナマリアは銃を差し出しながら笑みを浮かべた。


「ルナマリア、アレックスさんが困っているでしょう。そのくらいにしなさい」

「・・・・・・は〜い」


わざとらしく言ったアレックスという名前に幾分か引っかかりを感じながらも、ルナマリアは素直に頷いた。




















射撃訓練のシーンを思ったよりも長めに書いてしまいました(笑)
そしてヒロインの意外な過去が発覚!!
ちなみに「どこが完璧だ〜・・・」と言ったのはアスランではありませんv
実は、イザークです!
でもイザークも外れることあるんですよ?
ただヒロインよりも上手いというだけです(笑)
次回はオーブ編・・・・・かな?
キラとかラクスとかアンディとか登場の予定です^^
ユウナの出てくるシーンは省くかも・・・・・・・。

06.05.28