幾重にも分かれた破片が地球へと落ちていく。
暗闇の中光に照らされ、大気圏へと突入したそれらは赤く燃え上がった。
しかし幾ら砕いたからといって、地球の受ける被害は計り知れないものとなるだろう。
部屋に備え付けてあるモニターからその様子を見ていたは、あの血のバレンタインの悲劇を思い出していた。
彼女の家族が直接被害を受けたというわけではないけれど、今でも鮮明に覚えている。
モニターに何度も映し出される光景に、言葉を失った。
アスランはどんな気持ちで破砕作業に参加したのだろうか。
「・・・・・・行かないでなんて言えないよ・・・」
痛いほどに彼の気持ちが分かってしまう。
だから言えなかった。
握り締めたシーツにシワが寄る。
一度目を閉じて深呼吸をした後、瞳を開いて立ち上がった。
時の砂 〜運命の邂逅〜 6
荒い息遣いを繰り返し、操縦レバーを握る指に力が篭る。
ぎゅっと目を閉じて脳裏に木霊するのは彼らの言葉。
『我らコーディネイターにとって、パトリック・ザラの取った道こそ唯一正しきものと!』
2年前のあの日、ただ父の言葉だけが響いてその度に心を痛めた。
憎しみに心を囚われて、何もわかっていなかったのかもしれない。
母を心から愛していた父の心も、母を失ったことによって間違った道を進んでしまっていたことにさえも・・・・・・。
「・・・・さん。アスランさんっ」
直接頭に響いてくる声に、ゆっくりと目を開けると心配そうに覗き込むシンが見えた。
「大丈夫ですか? 無事大気圏を突破しましたよ」
「あ・・・ああ」
そこで初めて、そういえばシンに助けてもらったのだと思い出した。
やはりジンでの大気圏突破は無謀すぎたのだろうか。
彼がいなければ自分はどうなっていたか分からなかっただろう。
「アスランっ!」
「カガリ・・・・・」
「大丈夫なのか、お前・・・・・。MSででるなんて聞いてなかったから・・・」
「すまない」
まったくとわずかに怒ったような表情を浮かべるカガリに、うっすらと笑みを向ける。
それを遠巻きに見つめるシンたちに目もくれず、彼女は言葉を続けた。
「大変なことになったな・・・・・。だが、お前たちのおかげで被害も格段に少なくなったはずだ」
その言葉に、アスランは苦笑を浮かべざるを得なかった。
確かに被害は小さくなったけれど、それでも破片は落ちたのだ。
そしてそれをしたのは、いまだに父の言葉に囚らわれている者達。
カガリが気を使ってくれているのは分かっているのだが、今はただ淡く微笑むことしか出来なかった。
「やめろよっ!」
「・・・・シン?」
「アンタだってブリッジにいたんだろ!? ならこれがどういうことか分かってるはずだっ」
突如響いた叫び声に、ルナマリアが困惑の視線をシンに向けた。
その場にいたクルー達は皆、またかとはらはらしながら見ている。
「あれは自然現象じゃない、やったのは俺達と同じコーディネイターだ!」
「それは分かっているが・・・・・」
「シンっ!」
怒りを隠すことなくぶつける。
カガリも必死に言葉を紡ごうとするのだが、その迫力に気圧されて中々上手く言えないようだ。
このままでは埒が明かないと、ルナマリアがシンを止めに入る。
「だが、それでも破片は落ちた・・・・・。俺達は止めきれなかったんだ」
「・・・・・っ!」
まるで一人ごとを呟くように響いたアスランの声に、一瞬辺りが静まり返る。
そのまま踵を返し、去っていくアスランの表情が悲しげに歪んでいたような気がした。
慌ててその後を追おうとしたカガリを、シンの声が止めにはいる。
「やめろっていってるだろっ」
「・・・・しかし」
「連中の一人が言ったんだ。コーディネイターにとってパトリック・ザラのとった道こそが正しかったんだって」
驚きに目を見開いたカガリの脳裏には、銃弾に倒れるアスランの父――パトリックの姿が浮かぶ。
シンはキッと眉を寄せ、紅い瞳でカガリを睨みつけた。
「何も分かってない奴が下手な気休めするなよっ、あの人が可愛そうだ!」
格納庫へと向かうの視線の先には、アスランがいた。
「・・・・・・アスラン」
「・・・・」
まるで捨てられた子犬のように、弱々しい瞳がそこにはあった。
なにかあったの・・・・・。
そう聞きたかったけれど、その表情が悲しくてただ切なすぎて、は腕を広げてアスランを抱きしめた。
力強く回された腕に、切なさは募ってゆく。
冷たすぎる涙がの服を濡らして・・・そのとき初めてアスランの弱さを見た気がした。
言葉なんていらない、ただ温もりを貴方にあげる・・・・・・・。
お久しぶりの更新です><
いったい何ヶ月更新していなかったのでしょうか・・・・(汗)
これからは定期的に更新していきたいと思います!!
ラブラブを目指せど、シリアスばかりですね・・・・><
06.03.08