「オーブの・・・・アスハ・・・・・」
ルナマリアの呟きが、の耳を掠める。
ここで出て行ってもいいものか、けれど出て行かないわけにも行かないだろう。
こんな自分でも、一応彼女の上官なのだから。
「ルナマリア、なにをしているの?」
「さん!」
「彼女はオーブの代表で怪我をされているのでしょう? 医務室へご案内して差し上げて」
逸る動悸を鎮めながら、は冷静に指示を与えた。
少々不服だったのかもしれないが、ルナマリアはの指示に従いカガリを伴って歩いていく。
その斜め後ろを歩いている随員のアレックスと目が合ったが、はすぐに視線をそらした。
時の砂 〜運命の邂逅〜 3
「久しぶり・・・・というべきなのかしら?」
わずかに笑みを浮かべながら、向かいに座るカガリを見た。
彼女の怪我の治療が終わった後、士官室で待っているようにといわれたカガリたちの元をが訪れたのだ。
「ああ、そうだな。だが・・・・こんなことになるなんて・・・・」
「カガリ・・・・・」
悔しそうに唇をかみ締め、カガリは俯いた。
はかける言葉が見つからず、助けを求めるようにアスランを見る。
「いったいどういう状況なんだ?」
「私も・・・詳しいことは知らないわ」
そう、何も知らない、わからない。
けれど今の自分にわかる全てを、はアスランに話した。
何者かの襲撃を受け、新型のMS三機が奪取されたこと。
そしてこの艦、ミネルバは現在正体不明の艦を追っていること。
「あまり役には立たないかもしれないわね」
「いや・・・・そんなことはないさ」
「ありがとう・・・。あ、そろそろ議長が来られる時間ね、私はこれで・・・・」
会話らしい会話もなく、ただ視線を交わしただけ。
名残惜しそうにアスランを見つめながら、は扉のロックを解除した。
「きゃっ!? ・・・・・っつ」
「大丈夫かね?」
「ぎ・・ちょう・・・・っ!?」
扉が開くと同時に目前に迫る白と黒。
わずかな衝撃の後、身体が後ろに倒れそうになったが誰かの腕に支えられた。
どうやらタイミングよく入ってきた議長に、ぶつかってしまったらしい。
「キミはどうしてここへ?」
恥ずかしさを隠し切れず、けれどアスランとの関係を知られるわけにはいかないので、は差し当たりのないようにここにきた理由を告げる。
「お二人に飲み物を・・・・と思いまして」
それは嘘ではない。
ここくる口実として使ったそれが、まさかこんなところで役に立つなんて思ってもみなかった。
「そうか、すまなかったね」
「いえ・・・・・・」
どうやらデュランダルはの言葉を信じてくれたらしく、それ以上詮索はされなかった。
とすれ違うように中に入ったタリアは、少し怪しんでいたようだったがそれも仕方がないのかもしれない。
だって自分は、2年前の戦争の経験者というだけでこんな地位をもらってしまったのだから。
通路を歩きながら、改めて今来ている赤服を眺めた。
「・・・・アレックスって名乗ってたけど・・・・でも、アスランかも」
「え・・・?」
見知った名前には足を止める。
壁に隠れるように伺い見ると、ザクの前にルナアリアとシンがいた。
やっぱりあれはバレてるわよね・・・・・
元婚約者のラクス・クラインと並ぶくらい、アスランはプラントでの知名度が高い。
当然顔も知られているということで、そんなところにサングラス一つで来るということ自体ありえないことなのだ。
アスラン自身はあれで変装のつもりなのだろうが・・・・・・。
とにかく知っておいて損はないだろう。
は気配を消して二人の話に聞き耳を立ててていた。
「代表がとっさにそう呼んだのよ! その人のこと"アスラン"って」
ウキウキとした表情で語るルナマリアは、やっぱり女の子なんだなと思う。
年相応に見えるのだ。
「ザフトの伝説のエース、アスラン・ザラ・・・今はオーブにいるらしいって」
噂でしょ?
そういい終えると、彼女はザクを見た。
「アスラン・・・・ザラ・・・・」
静かに響いたシンの声。
ルナマリアのものとは違う感情の込められたそれに、はなぜか逃げるようにして、その場を去ってしまった。
お久しぶりの更新です!
運命もついに終わってしまいましたね><
でも私なりの運命の世界を描いていきたいと思います!
そして私はミーア大好きな人なので、彼女に対してはやさしめで・・・・。
というかありえない設定を考えていたり(汗)
あ、でも生存とかではないので!
その辺は本編通りです。
でも別のお話でそういうのも書いてみたいなと思っていたり(笑)
05.10.11