また私は貴方を送りだすことしかできないのね。
無力な自分が嫌で堪らないけれど、それでも・・・・・・。
私はいつでも・・・・・貴方の側にいるから。
時の砂22
本当は行かないで欲しい。
だって、もうこのまま帰ってこないかもしれないから。
そんなの不安を察したのだろう、アスランは黙って彼女を抱きしめた。
「俺は絶対帰ってくるから」
「アスラン・・・・」
「だから・・・も強くなって」
待ってるだけじゃない。
祈っていよう。
アスランの無事を。
悲しみに負けないように。
そしていつでもこの腕を広げて、受け止めてあげよう。
傷ついて帰ってくるアスランが、少しでも安らげるように。
「アスラン、約束破ったらミゲルに祟られるわよ」
「・・・・それは困るな」
「ふふ、そうね。・・・・・いってらっしゃい」
「ああ、は俺が守るから」
軽く触れるだけの口付けを交わし、その逞しい背中を見送った。
一人になって、見渡す宇宙――そら――はと同じで悲しそうに見える。
しばらくして、真っ暗な暗闇に閃光が走った。
それは、激しい戦いの幕開けとなる。
多大な犠牲を払い、停戦という形で戦争は幕を閉じた。
恋人を失った者、友人を失くした者。
もまた、その一人。
ミゲル、ラスティ、二コル、アイシャ・・・・・・・。
どうか、彼らに安らかな眠りを――――――。
『さん、ブリッジまで来てください』
突然響いたラクスの声は、どこか切羽詰っているようだった。
は無性に嫌な予感に襲われながら、ブリッジへと急いだ。
「ラクスさん!?」
「・・・・アスランとカガリさんとキラが・・・・・」
「え・・・・?」
「まだ戻ってこないのです」
まだ無事が確認できていないと、ラクスは悲しげに目を伏せた。
アスランとカガリはジェネシス内部に突入し、戻ってこないのだという。
激しい動揺に襲われながら、それでもは真っ直ぐラクスを見つめた。
「ラクスさん、アスランは・・・・アスランたちはきっと戻ってきます」
「・・・・・」
「だから・・・信じて待ちましょう?」
ラクスの手を取ると、ぎゅっと握り締めた。
気丈に振舞って、強そうに見えるけどそれはただ強がっているだけ。
女の子は皆、強くなろうとしてる。
好きな人のために、自分のために・・・・・・。
私は信じてる。
アスランが戻ってくることを。
だって、約束したもの。
「AAより通信! ジャスティス、ルージュ、フリーダムのパイロット3名の無事を確認。現在こちらに向かっています!」
その知らせは、ラクスのの表情を明るいものに変えた。
はラクスに微笑むと、その腕を引き格納庫へと向かう。
「行きましょう! ラクスさん」
「はい!」
全てが終わったと思った。
なにもかも諦めてしまったのだ。
でもその時・・・・・・の声が聞こえた。
『・・・・・もう・・・・離さないで』
再会したあの時、泣きながら告げるが、無性に愛しく感じた。
絶対離さない。
そう誓ったんだ。
「逃げるな!! 生きる方が戦いだ!」
カガリの声に、アスランの意識は覚醒する。
そうだ・・・・生きなきゃいけないんだ。
一度は諦めてしまった俺を、キミは怒るだろうか。
否、きっと優しく抱きしめてくれるだろう。
無事でよかったと。
「・・・・ただいま」
「・・・・っ! おかえり・・・なさ・・・っ」
気まずそうに微笑を浮かべれば、泣きそうな表情のが飛び込んできた。
その身体を受け止めると、何も言わずただその温もりを感じあう。
生きてて良かった・・・・・。
君に出会って俺は・・・・・・・そう思えたよ。
貴方に出会えてよかった。
これからもずっと・・・・・・・・側にいてください。
傷ついた世界は、簡単には直らないけど。
アスランと一緒なら、どんなことでも耐えられるから。
私たちは、迷いながら生きていく。
それでも幸せはそこにあって、手を伸ばせばすぐつかめるの。
失くしたものもあるけれど、それ以上に得たものもあるから。
全ての人が、幸せになれる。
そんな世界を作りたいね。
そしてそのときは、貴方が私の隣にいてくれる。
さぁ、止まっていた時を動かそう。
ここから、私たちの未来が始まっていく・・・・・・・・・・・・。
FIN