始めは、ただの好奇心だった。






















それが、恋に変わったのはいつだっただろう。

















時の砂 2





















「よっ、何してんだ? お前ら」

「ミゲル」



休憩室での雑談中、声をかけながら割り込んできたのはミゲルだった。
その後ろにはいつものようにがいる。
ほんの数日前に新人としてザフト軍に入隊した彼ら5人。



「よっ、姫さん」

「誰が姫よ!! 止めてっていってるでしょう?」



気軽に挨拶をしてくるのは金髪に褐色の肌をしているディアッカ。



「フン・・・・・・あいつのことは気にするな」



冷静そうに見えて意外と熱い性格をしているのはイザーク。
プラチナの髪にアイスブルーの瞳をしている。



「相変わらずですね・・・・。こんにちは、

「よっ、



可愛らしい笑顔で微笑んでいる若草色の髪の少年はニコルだ。
もう一人、オレンジ色の髪で子供みたいに無邪気に見えるのはラスティ。
そして最後に・・・・・・・・・。



「こんにちは、アスラン」

「ああ・・・・」



そっけない態度で、そう言って挨拶する宵闇色の髪の彼はアスラン。
まるで吸い込まれてしまいそうなほど深い翡翠色の瞳に、は一瞬意識を奪われていた。



、どうした?」

「え? なんでも・・・ないよ」



一般兵でオペレーターを担当するにとって、アスランたちとの接点は無いに等しい。
そんな彼女が彼らと話をするようになったのは、がミゲルの婚約者だから。
どうして、それを悲しいと感じるのだろうか。
なぜ、こんなにも胸が苦しくなるのだろうか。
その答えは、まだ分からなかった。



「ねぇ、ミゲル。 あなた彼らに伝えることがあったのでしょう?」

「オウ!! そうだった」

「・・・・・しっかりしてよね」



ため息混じりに呟くが、当のミゲルは気にした様子もなく、そのためにお前を連れてきたんだと言う始末。
そんな調子で毎回巻き込まれるにまともな仕事が出来るはずもなく、雑用係に回されるのは、この艦で暗黙の了解となっていた。



「お前らに初任務だ!!」



まるで面白がっているかのようなミゲルの態度に、はため息を吐くしかなかった。



























「あれ? アスラン・・・・?」

「・・・・・?」

「どうしたの、こんなところで」

「いや、少し宇宙(そら)を眺めようと思って」



またしてもミゲルに連れ回された帰り道、は偶然アスランに会った。
その表情が、心なしか不安そうに見えて、胸が痛かった。



「なにか・・・・あったの?」

「・・・・・・別に」

「そう・・・・」



相変わらずそっけないアスランに、は少しだけ表情を曇らせた。
思えば、ミゲル抜きで話をするのは初めてなのかもしれない。



「そういえば!!」

「え?」



少しでもこの場を明るくしたくて、は話題を変えた。



「アスランって、私より一つ年上だったのね」

「・・・・・・・・・え?」

「だって・・・・16でしょう、アスラン」

「ああ・・・・・」



アスランの反応に、は少しだけ頬を膨らませた。
いつも自分が年齢を言うとみんな驚いてしまうのだ。
そんなに年相応に見えないのだろうか。
身体的には特にこれと言って同年代の女の子と違うところがあるとは思えない。
はう〜んと唸りながら下を向いた。



「ごっ、ごめん!! その、もっと上かと思ってたから・・・」

「私って、そんなに老けてる・・・・・?」

「え!? いや、そんなことないって」



慌てて否定するアスランに、は涙で潤んだ瞳を向けた。



「うっ・・・・・」

「・・・・ふふ・・・・あははははははっ」

っ!?」



始めて見る彼の表情に、思わず笑いがこみ上げてきてしまったのだ。
失礼だと言うことは分かっていたけれど、どうしても笑いが止まらなかった。
私、アスランのことを誤解していたかもしれない。
そう思った。
とても無口で、冷静で、かっこいい。
皆はアスランのことをそう話している。
けれど、今のアスランは噂とは違う。
無口ではなくて、きちんと返事をしてくれて、余裕が無くて。
本当はすごく不器用な人なんだとは思った。



「アスランって、不思議な人ね」

「え?」

「一緒にいるとここが温かくなるの」



トンと、アスランの胸を指で押しながら、は笑みを向けた。
もしかしたら、アスランのことが好きなのかもしれない。















それは、初めて抱いた恋心。

















「任務、頑張ってね」

















アスランに囁いてから、はその場をあとにした。
























その先に待つ、悲劇を知らずに・・・・・・・・・・・。