やっとキミに逢えた。







もう二度とこの腕を放さないと誓うから。







もう誰も、憎まないでくれ・・・・・・・・。








今度は俺がキミを護るから。










時の砂 15










「話がしたい・・・・お前と」

「アス・・・・ラン・・・」



キラが生きている。
その事実を、アスランは今自分の目で確認していた。
夕日の中再び垣間見た親友の姿は、アスランの心に何を思わせるのか。
言葉を発することもなく、縮まっていく二人の距離。
3年前ならば、戸惑うことなくキラとの再会を喜んだだろう。
けれど今の二人の間には、見えない溝があった。
戸惑いを感じながら、最後の一歩を踏み出せないでいる。


―――トリィ


そんな二人の間に割って入ったのは緑色のペットロボット。
別れの日、キラに渡したトリィが再び二人の心を繋ぐ。


「やぁ・・・アスラン」

「・・・・・・っ!?」


どんな顔でキラに会えばいいのか分からなかった。
一度は本気で殺しあった親友は、自分のことを許してくれるのだろうか・・・・と。
けれどキラは微笑をアスランに向けた。
まだ昔のように笑いあうことはできないけれど、でも・・・・・いつかきっと。

























どうしてあんなことをしてしまったのだろう。
シアは唇に指で触れながら、悲しげに目を伏せていた。
どうしてだか分からないけれど、なぜかキラのことを愛しいと感じた。
彼が誰かに似ていたから。
でもシアの脳裏を掠める人の瞳は翡翠色。




貴方は誰なの・・・・・・。




そして、私は誰?




考えれば考えるほどに思い出すなと脳が拒絶する。
痛む頭を抱えながら、それでもシアはキラにもう一度会わなければならなかった。
本当はもっと早く謝りたかったけれど、キラは戦闘に出てしまい、やっと帰ってきたのだ。
けれど暫くは疲れているだろうからと、キラに会いに行こうとはしなかった。


「そろそろいいかな・・・?」


頃合を見計らって、キラの元へいこうとシアは立ち上がった。
とは言ってもキラがどこにいるのか、シアは知らない。
それでもなんとなく足を動かし、先へ進んだ。
すると数日前カガリに連れられてきた格納庫にいることに気づく。
辺りを見渡せばたくさんのモビルスーツがあった。
そのどれもが、先程の戦闘の激しさが分かるくらいに機体の損傷が激しい。
そして数少ない整備士たちが忙しそうに動き回っている。
その中でほとんど損傷もなく、ほかの機体のデザインとは少し違う機体が見えた。
真っ白なボディに映える青い翼。
それはまさしくキラの機体、フリーダムだった。


「あそこに行けば、キラに会えるかしら・・・・」


キラに謝りたい。
その思いが強いシアは気づかなかった。
少しだけ離れた先に、真っ赤な深紅の機体があることに・・・・・・。











「しっかしさすがな、俺にはまねできないな」

「そんなことないですよ」

「いや、やぱりお前はすごいって」


フリーダムを見上げながら、金髪の男性――フラガは言った。
あれだけの戦闘をしていながら、ほとんど機体の損傷が見られないフリーダムに感心しているようだ。
そしてそれを操るキラの能力にも。


「俺はあれを操縦するだけでも精一杯だってのに・・・・」

「そうですか・・・?」

「まぁな、でもやっぱりさすがだな。元ストライクのパイロットだけはあるって!」


声を上げて笑いながら、フラガはキラの背中を叩いた。
俺も負けてらんねぇなぁ。
そういいながらフラガは去っていった。


「好きでこんな風になったわけじゃないですよ・・・・・」


悲しげなその呟きは、フラガには届かなかった。
もう一度フリーダムを見上げたあと、キラはシャワーでも浴びようと踵を返した。


「・・・・・・シア・・・?」


けれど向けた視線の先にいたのは、驚きに目を見開くシアの姿。
その様子が尋常ではないことに気づいたキラは、ゆっくりとシアに近づいた。


「こ・・・・で・・・・」

「・・・・え?」

「こないでぇーーーーっ!!!」


叫ぶ彼女の瞳には、涙が浮かんでいる。
状況がつかめないキラは、けれど踏み出した足を止めその場に留まった。



「・・・だったなんて・・・・」

「・・・シ・・・ア・・・?」

「あなたが・・・・あなたがっ!!」


キラに向けられたシアの瞳には、憎しみの色が宿っていた。
戦場でも滅多に感じることのないくらいに激しい殺気が篭っている。
そしてその瞳は、以前にもどこかで・・・・・。


「まさか・・・・キミは・・・・あの時の・・・・・」


不思議と感じていた違和感が、今やっと解けた。
キラがどこかでシアを見たことがあると思ったのも、そしてシア――否、がキラに不思議な感情を抱いたのも、全てに納得がいく。



























再び記憶を取り戻したの心は、壊れていた。